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不動産会社が1件の問い合わせに払っている金額 —— 紹介料の流れと、電話が来る理由

一括査定に依頼を出すと、複数の会社から連絡が入ります。その理由を「営業熱心だから」で片づけると、構造を見誤ります。連絡の裏には、はっきりしたお金の流れがあります。この記事では、誰が誰にいくら払っているのか、なぜその金額で会社が動くのか、そしてその費用があなたの売却価格にどう関わるのかを書きます。

お金は、誰から誰へ流れているか

一括査定をめぐるお金の流れは、3段になっています。

  1. 不動産会社 → 一括査定サイトの運営会社。不動産会社は、依頼(問い合わせ)を受け取る対価として、1件ごとの紹介料、または月額の掲載料を払います。どちらの方式か、いくらかは、運営会社と不動産会社の間の契約で決まり、売主には見えません。
  2. 一括査定サイトの運営会社 → 情報メディア。運営会社は、自分たちのサイトへ利用者を送ってくれるメディアに、成果報酬型の広告費を払います。本サイトもこの段に位置しています。 読者が本サイトの相場ページから査定サービスへ移動し、申し込みが成立すると、本サイトは広告収入を受け取ります(運営者情報に記載)。
  3. 売主 → 不動産会社。売買が成立したときだけ、仲介手数料が発生します。査定を受けた段階、媒介契約を結んだ段階では発生しません。

売主が払うのは3段目だけです。1段目と2段目は、不動産会社の広告宣伝費の中で処理されています。

紹介料の金額は、公開されているか

まとまった形では公開されていません。 各運営会社が不動産会社向けに配る営業資料には料金表がありますが、一般に読める一次資料ではなく、契約条件によっても変わります。本サイトは、一次資料で確認できない数値を記事に書かない方針を取っているので、「1件◯円」という数字をここに置くことはしません。

ただ、金額の桁は構造から推定できます。不動産会社が1件の紹介料に払える上限は、「その依頼が成約に至ったときに受け取れる仲介手数料」に「成約に至る確率」を掛けたものを超えません。前者は法令で上限が決まっており、後者は会社の経験値です。前者を見ていきます。

仲介手数料の上限は、法令で決まっている

宅地建物取引業法は、不動産会社が売買の媒介で受け取れる報酬の上限を、国土交通大臣の告示で定めると規定しています。告示の内容を要件として列挙します。

  • 売買価格が400万円を超える場合、依頼者の一方(売主または買主)から受け取れる報酬の上限は、売買価格 × 3% + 6万円(これに消費税)。
  • この額は上限であり、下回る設定は自由です。
  • 売主と買主の双方から依頼を受けた場合(いわゆる両手取引)、会社はそれぞれから上限まで受け取れます。
  • 売買価格(税抜)が800万円以下の物件については、媒介に要する費用を勘案して、上の計算による額を超えて、30万円の1.1倍(33万円・税込)を上限に受け取れる特例があります(2024年7月1日施行の改正後の告示)。

この式を、本サイトの相場ページの中央値に当ててみます。あくまで「中央値の価格で成約し、上限どおりに手数料を受け取った場合」の計算です。

売主側だけでこの金額です。買主も自社で見つければ、この倍になります。

だから会社は、1件の依頼に費用を払う

1件の成約で数十万円から百万円台の報酬が入るなら、依頼1件あたりの紹介料がその何十分の一かの水準であっても、依頼のうち数%が成約するだけで計算は合います。たとえば10件の依頼のうち1件が媒介契約になり、そのまた半分が成約する、という程度の確率でも、成約1件の手数料が紹介料の総額を上回る設計になっているからです。

この計算が成り立つ限り、不動産会社は依頼を買い続けます。そして、買った依頼を無駄にしないために、受け取った直後に連絡します。電話が来る理由は、会社が費用を払っているからです。 連絡しなければ、払った紹介料はそのまま費用になります。

もうひとつ、同じ依頼が競合にも届いていることを会社は知っています。先に話をした会社が媒介契約を取りやすい、という経験則があるため、連絡の速さで競争が起きます。依頼の直後に連絡が集中するのは、この2つの事情の重なりです。

紹介料は、あなたの売却価格に上乗せされるか

直接には上乗せされません。 仲介手数料は法令で上限が決まった成功報酬であり、「紹介料の分を手数料に足す」ことは制度上できません。売却価格そのものも、買主との合意で決まる数字であり、会社の広告費で動くものではありません。

間接的な影響は、断定できない範囲で2つ考えられます。ひとつは、広告費を多くかけている会社ほど、手数料の値引き交渉に応じる余地が小さい可能性があること。もうひとつは、紹介料を回収するために早く成約させたい動機が、値下げ提案の早さに表れる可能性があることです。どちらも会社ごとの経営判断であり、外からは見えません。この2点は、会社の説明を聞くときの補助線になる程度のものです。

本サイトの立場を書いておきます

本サイトは、上に書いた2段目の位置にいます。読者が相場ページから査定サービスへ移動し、申し込みが成立すると、広告収入を受け取ります。だからこそ、次の2点を明示しています。

  • 相場の集計は広告と切り離しています。 掲載している中央値・件数・分布は、国土交通省の公開データを機械的に集計した値で、広告の有無や収入額で変わることはありません。算出手順は「数字の根拠と集計方法」で公開しています。
  • 本サイトは、あなたの申込内容を受け取りません。 受け取るのは、申し込みが成立した事実と、どのページから移動したかだけです。査定を行うのも、売却を仲介するのも、本サイトではなく各不動産会社です。

この記事を読んで依頼をやめる方がいても、それは正しい判断のひとつです。仕組みを知ったうえで使うか使わないかを決めてもらうことが、長い目で見て本サイトの信頼になると考えています。

仕組みを、あなたの側で使える形にするには

紹介料の流れを知ったうえで、依頼を自分に有利に使う方法は3つあります。

  1. 依頼する社数を自分で決める。 送り先の会社を選べる画面があるサービスでは、上限の社数まで送る必要はありません。連絡の量は、送った数に比例します。
  2. 連絡が来る前に、聞くことを決めておく。 査定額の根拠になった事例、売出価格と成約見込みの区別、想定販売期間。全社に同じ質問をすれば、比較できます。詳しくは「査定額の高い会社が、高く売れる会社とは限らない理由」に書きました。
  3. 相場ページで、幅と件数を先に見ておく。 取引の多いエリアでは統計の幅が頼りになります。逆に、我孫子市のマンションのように直近1年の取引が47件(直近8四半期で95件)というエリアでは、1件の取引が中央値を動かします。こういうエリアでは、統計より実物を見た査定額のほうが手がかりとして手堅く、複数社から取る意味も大きくなります。

依頼の流れそのものは「一括査定の仕組み —— 依頼したあと、各社から連絡が入るのはなぜか」にまとめています。

編集長の見方

私は不動産・金融の領域で集客の実務に関わってきました。この仕組みを内側から見ると、紹介料は「売主の関心を、会社が買っている」お金です。買われたのはあなたの関心であって、あなたの物件でも、あなたの決定でもありません。関心を買った会社が話をしに来る。話を聞いて、任せるかどうかを決めるのはあなたです。

お金の流れが見えていれば、電話に身構える必要はなくなります。相手が何のために電話してきたかが分かっているからです。それが、この記事を書いた理由です。


本記事は不動産業界の集客の仕組みについての一般的な説明です。紹介料・掲載料の具体的な金額は各運営会社と不動産会社の契約によるもので、本サイトは把握していません。仲介手数料の上限は執筆時点の法令・告示にもとづく要件の列挙であり、個別の取引への当てはめは契約書面と担当者への確認が要ります。査定を行うのは各不動産会社であり、本サイトは査定・仲介を行いません。

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ (https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)

「不動産価格(取引価格・成約価格)情報」(国土交通省)をもとに合同会社サイバーオプテーニ作成(サービス名: イエソウバ)。準拠ライセンス: 公共データ利用規約(第1.0版)。

本ページの相場情報は公開データを統計処理した参考値であり、個別物件の査定額・成約価格を保証するものではありません。