家の売却の流れと期間 — 3つの区間に分けると、どこが読めてどこが読めないかが分かる
家の売却にかかる期間は、ひとつの数字では答えられません。ただ、全体を「売り出すまで」「売り出してから契約まで」「契約から引渡しまで」の3つの区間に分けると、どの区間が自分で決められて、どの区間が相手次第なのかがはっきりします。この記事では流れを順に追いながら、それぞれの区間の長さが何で決まるのかを整理します。
売却は、どんな順番で進みますか
| 段階 | 何をするか | 区間 |
|---|---|---|
| 1 | 市区町村の相場を公開データで確認する | 売り出すまで |
| 2 | 複数の不動産会社に査定を依頼し、査定額と根拠の説明を並べる | 売り出すまで |
| 3 | 不動産会社と媒介契約を結ぶ(一般・専任・専属専任のいずれか) | 売り出すまで |
| 4 | 売出価格を決め、広告・内覧を始める | 売り出してから契約まで |
| 5 | 購入申込みを受け、価格と条件を調整する | 売り出してから契約まで |
| 6 | 売買契約を結び、手付金を受け取る | 契約から引渡しまで |
| 7 | 買主が住宅ローンを使う場合は、買主側の本審査を待つ | 契約から引渡しまで |
| 8 | 残代金の受領・鍵の引渡し・所有権移転登記(決済) | 契約から引渡しまで |
順番そのものは物件の種別や地域が違ってもほぼ同じです。違うのは、各段階にかかる時間です。
「売り出すまで」の期間は、何で決まりますか
この区間は、ほぼ売主の側で決まります。相場を調べ、査定を依頼し、媒介契約を結ぶまでの時間は、売主がどれだけ早く動くかで伸び縮みします。
ここで時間がかかりやすいのは、実は書類の準備です。登記識別情報(古い物件では登記済証)、購入時の売買契約書や重要事項説明書、マンションなら管理規約や長期修繕計画、戸建てや土地なら境界確認書や測量図。これらがすぐ出てこないと、査定の精度も、そのあとの契約準備も遅れます。売却を考え始めた段階で、手元にある書類とない書類を分けておくだけで、この区間は短くなります。
媒介契約の種類で、期間の縛りは変わりますか
変わります。宅地建物取引業法第34条の2は、媒介契約について書面の交付を義務づけたうえで、専任媒介と専属専任媒介について次の点を定めています。
- 有効期間は3か月を超えることができない(超える定めをしても3か月に短縮される)
- 更新は依頼者からの申出があった場合に限られ、更新後の期間も3か月を超えられない
- 不動産会社は、契約した物件を指定流通機構(いわゆるレインズ)に登録しなければならない。登録の期限は施行規則第15条の10により、専任媒介で契約日から7日以内、専属専任媒介で5日以内(いずれも不動産会社の休業日を除く)
- 業務の処理状況を、専任媒介では2週間に1回以上、専属専任媒介では1週間に1回以上、依頼者に報告しなければならない
一般媒介にはこれらの期間・登録・報告の義務はありません。複数の会社に同時に依頼できる代わりに、業務の処理状況を定期的に報告する法律上の義務は付いていない、という構造です(なお、購入の申込みがあったときに遅滞なく報告する義務は、媒介契約の種類を問わず課されています・第34条の2第8項)。
「売却の期間は3か月」という言い方をよく見かけますが、この3か月は平均でも目安でもなく、専任・専属専任媒介の有効期間の上限からきている区切りです。3か月で成約するという意味ではなく、3か月ごとに依頼を続けるかどうかを見直す機会が来る、と読むのが正確です。
「売り出してから契約まで」は、なぜ読めないのですか
この区間だけは、買主という相手がいて初めて終わるからです。売主にできるのは、売出価格の設定・内覧の受け入れ・申込みへの対応であって、買主がいつ現れるかは決められません。
読めない区間だからこそ、売主が動かせる要素がひとつあります。売出価格です。売出価格が市場の水準から離れていれば、内覧の申込み自体が入りにくくなります。売り出してから価格を下げる調整はできますが、下げた履歴は買主候補にも見えますし、時間も戻りません。この区間の長さは、売出価格を決めた時点でかなりの部分が決まっています。
「契約から引渡しまで」は、何が挟まりますか
売買契約を結ぶと、買主から手付金を受け取り、残代金は決済日に受け取ります。契約と決済の間に挟まるのは、主に買主側の手続きです。
- 買主が住宅ローンを使う場合、契約後に金融機関の本審査が行われる。審査が通らなかった場合に契約を白紙に戻す特約(融資特約)が付くのが一般的で、その期限までは売主も待つ
- 売主側に住宅ローンの残債がある場合、決済日に売却代金で残債を返済し、抵当権を抹消する段取りを金融機関と組む
- 引渡しの日程を、売主の転居、買主の入居希望日と合わせて決める
不動産会社は契約成立後、遅滞なく宅地建物取引業法第37条に定める事項を記載した書面を交付します。契約書の内容は、この時点までに読み込んでおくものです。
公開データから、売れるまでの期間は分かりますか
正直にお伝えすると、分かりません。当サイトが集計している国土交通省の取引価格情報には、売り出してから成約するまでの日数は含まれていません。取引時期も四半期単位(例: 2025年4〜6月)で収録されており、個々の取引が何日で決まったかを読み取ることはできない設計です。
公開データから読めるのは、その街でどれだけの取引が積み重なっているか、つまり比較材料の厚さです。たとえば「足立区のマンション売却相場」では、直近8四半期(2024年4月〜2026年3月)で1,147件の取引が集計対象になっており、直近1年(2025年4月〜2026年3月)の中央値2,900万円は540件の取引から算出しています。「府中市のマンション売却相場」は同じ8四半期で383件です。件数が多い街では、売出価格を決めるときに参照できる事例が多く、買主側も相場を把握しやすい環境にあります。
一方、「大阪市北区の土地売却相場」は同じ8四半期で35件、直近1年(2025年4月〜2026年3月)に限ると12件で、直近の1四半期(2026年1〜3月)に取引が確認できなかったため前年比は算出していません。同じ北区でも「大阪市北区のマンション売却相場」は8四半期で899件あります。件数が薄い種別・地域では、統計値だけで価格の見当をつけることに限界があり、物件を見たうえでの査定額を複数社で比べることが、価格の手がかりを得る手段になります。
件数の厚さと期間の長さは別の量ですが、無関係ではありません。比較材料が少ない市場では、売主と買主のどちらも「この価格が妥当か」の判断に時間がかかります。件数は期間そのものを教えてくれませんが、期間が読みにくい市場かどうかは教えてくれます。
期間を長引かせる要因には、何がありますか
多いものから挙げます。
- 売出価格と市場の水準の乖離: 内覧が入らない状態が続く要因として、まず疑う点です
- 内覧の受け入れ日時が限られる: 居住中の売却では、内覧の日程が合わないだけで内覧の機会が減ります
- 書類の不備: 境界が未確定の土地、増改築の記録がない戸建て、管理費の滞納があるマンションなどは、契約直前で時間がかかります
- 住宅ローン残債の段取り: 決済日に残債を一括返済する手続きは、金融機関側にも申出の期限があります。契約後に慌てて動くと決済日が後ろにずれます
- 買主側の融資審査: 売主には動かせない要因です。契約時に融資特約の期限を確認しておくと、待つ期間の上限が分かります
編集長の見方 — 動かせる区間に力を使う
3つの区間のうち、売主が自分で短くできるのは最初の「売り出すまで」と、最後の「契約から引渡しまで」の売主側の段取りです。真ん中の区間は相手次第ですが、その長さを左右する売出価格の判断は最初の区間で行います。つまり、期間を読みやすくする準備は、ほとんどが売り出す前に集中しています。
私は、売却を考え始めた時点で市区町村の中央値と価格の幅を見ておき、査定額をその幅のどこに置いて読むかを決めてから媒介契約に進む順序を基本にしています。当サイトから案内するサービスでは査定の依頼に費用はかからず、売却を決めていない段階でも相場確認の目的で使えます。売却時期が未定でも査定は受けられますから、急いで決める必要はありません。